呉羽の昔ばなし

湧き出た清水

昔、昔、ずっと昔、杉谷村の人々が、狩りや猟をして暮らしていたころのお話です。
この村に、明神池という池がありました。ある時、建御名方主命が、池のそばに常盤木を植え、玉垣を結って神籐を造りました。そして、子孫がもっと繁栄するようにとお願いしました。

湧き出た清水挿絵1

すると、どうでしょう、
命の姿は、白い大蛇となって池の底に消えてしまったではありませんか。そして、神籐の下の岩が割れ、美しい水がどっとあふれ出てきたのです。
「なんと不思議なことだろう」村の人たちは、畏れふるえました。両手を合わせて、あふれ出る水を拝みました。
「神籐の下の岩には、神様がいらっしゃるにちがいない」
「神様のお好きなものをお供えしよう」

水は、透き通っていて、とてもきれいです。どんどん湧いてきます。村の人びとは、おいしい水を飲みました。ぜんまいやわらび、大根やいもを、その水で、洗ったり煮たりしました。それで、力はもりもり、病気も治りました。

「ありがたい、ありがたい、これは霊水だ、蛇清水だ」
毎日毎日、霊水をいただき、元気に暮らしたそうです。

それから、また、ずっと年月がたった江戸時代の初めのころです。
前田のお殿様、利次様が、杉谷の山に来られました。家来をつれて鷹狩りをされ、矢を射る訓練もされました。

「ちょっと汗をかて喉がかわいたが、飲み水はないかな」
あたりを見渡すと、明神池の湧き水が見つかりました。一口、水を飲まれました。思わず「うーん」。もう一口、声も出ません。あとはぐいぐいとお飲みになられます。
「鷹狩りの時には、いつもここに寄ろう、こんなにおいしい水のあるところは、なかなかないぞ。きょうは、城にも持ち帰ろう」

湧き出た清水挿絵2

お殿様は、その後、鷹狩りのたびに、ここで喉を潤されました。
「鷹狩りの間は、村人はこの水を使ってはならない」
と、おおせられるほどのお気に入りでした。それで、『殿様清水』とも呼ばれています。

おはなしの舞台

北陸自動車道が建設されたとき、清水の湧出口が道路にかかったので、清水を自動車道の北側に引いた。現在杉谷の霊水として親しまれ、そばに休憩所も整備されている。

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