雀の長者
昔、昔、呉羽山のふもとに、黒ひげ爺さんと、白ひげ爺さんが住んでいました。
ある日、白ひげ爺さんが、黒ひげ爺さんに頼みました。
「ほんの少しでいい、粟の種ときびの種を貸してください」
「わしのところも、少ししかない、あんたに貸してあげることはできない」
「必ず返します、どうか貸してください」
白ひげ爺さんは、なんどもなんども頭を下げて頼みました。黒ひげじいさんは、仕方なく、貸してあげることにしました。
「じゃあ、そこで待っていろ、いま、持ってくるから」
黒ひげ爺さんは、粟の種、十つぶ、きびの種、十つぶ、数えました。意地悪をして、二十つぶの種に、そおっと熱い湯をかけました。そして、「さあ、十倍にして今年中に返すんだぞ」と言いながら、白ひげ爺さんに渡しました。
白ひげ爺さんは、さっそく、ていねいに種をまきました。水をかけました。毎日、かけました。芽は、なかなか出てきません。畑の上をとんでいる雀も心配しています。
やっと、粟の芽がたった一つ、きびの芽も一つ、顔を出しました。不思議なことに、みるみるうちに大きくなりました。粟の実がたくさんなりました。きびの実もたくさんなりました。白ひげ爺さんは大喜び、雀もチチチチと、うれしそうに飛び回っています。
白ひげ爺さんは、黒ひげ爺さんに、百倍にして返しました。
「ちゃんと返せて、ああ、よかった、これでやっと ほっとしたよ」
その晩、白ひげ爺さんは、ぐっすり眠りました。
夢の中で、雀が歌っています。
♪うるし千ばい 朱千ばい、 金のおんどり 金のめんどり、
朝日輝き 夕日さす 宝は うつぎの木の下に♪♪♪♪
白ひげ爺さんは、朝起きて、うつぎの木の根元を掘りました。黄金づくりのおんどりが、出てきました。めんどりも、出てきました。
白ひげ爺さんは、鶏を家の宝にしました。
一生懸命に働き、やがて、大金持ちになりました。それで、村の人から『雀の長者』と呼ばれたということです。
おはなしの舞台
雀の長者の屋敷は、蜆ケ森貝塚(縄文時代)の上に建つ白髭神社のあたりと伝えられている。雀の長者話には、砺波別所七山の長者との知恵比べなどもある。
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